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2021.2.12

小石原焼のこれまでと未来にインスパイアされた話

「小石原焼」
かつて柳宗悦(1889~1961)は名も無き職人の手から生み出された日常の生活道具を「民藝(民衆的工芸)」と名付け、美術品に負けない美しさがあると唱え、美は生活の中にあると語った。鑑賞のためではなく、日常的な暮らしの中で使われてきた手仕事の日用品の中に「用の美」を見出す「民藝運動」はブームを巻き起こす。そうした中、1954年に柳宗悦、河井寛次郎、濱田庄司そしてバーナード・リーチらが小石原村を訪れ、小石原焼を絶賛したことでその名を全国に知られることとなった。

さらに日本民芸協団を設立した三宅忠一(1900~1980)は小石原焼に対し、大物から民芸的な小物への転換などを窯元へ働きかけ、また私財を投じて経済的な支援も行うなど情熱を傾けた。そんな三宅の活動はやがて「民陶祭」(現在の「民陶むら祭」)を生み出し、1975年(昭和50年)通産省の伝統的工芸品への指定に繋がっていった。そうして小石原焼は「作れば売れる」という絶頂期を迎える。…が、やがてバブルは弾け、追い打ちをかけるように小石原を悲劇が襲った。

 

「平成29年7月九州北部豪雨」
2017年(平成29年)7月5日から6日にかけて福岡県と大分県を中心とする九州北部で発生した集中豪雨は、日本の気象観測史上でも最大級のものとなった。土砂崩れ・河川の氾濫が相次ぎ、死者40人・行方不明者2人を含む悲惨な人的被害を被った豪雨であった。小石原も被災し、多くの窯元が苦境にさらされた。今回僕が訪ねた「やままる窯」の窯元夫人・梶原成美さんは当時の状況をこう語ってくれた。「バブルがはじけデフレに入り、小石原焼は大きく衰退しました。ファストファッション・100円均一など海外生産の安価なモノに押され、伝統産業としての陶器は売れなくなります。小石原焼の多くの窯元も明日が見えない不安を感じていました」

はるか350年以上も前に小石原で始まった陶芸は、時代の流れの中でこれまでも繁栄と沈滞を繰り返してきた。そして今、再び甦ろうとする風が吹き始めている。2019年に東峰村地域おこし協力隊に就任した後藤抄織さん。福岡県糟屋郡宇美町から東峰村に移り住んだ後藤さんは、小石原の焼き物の魅力にいっきに惹きこまれた。その魅力発信に奮闘するさなか、新型コロナウイルスが世界大流行となり、東峰村最大のイベントである「春の民陶むら祭」が開催できなくなる。いま自分に何が出来るのか、何とかしたい、その思いが後藤さんを突き動かした。

 

「ネットで民陶祭」
SNS上で民陶祭をやろう!そんな案が浮上したのは、例年の開催日であるGWのわずか2週間前。後藤さんを含め5名の有志は昼夜を問わず企画を練った。今からネットショップの開設は間に合わない。泥くさくてもすべてを手作業で進めるしかなかった。窯元との交渉、作品撮影、SNSでのページ開設と情報のアップ、お客さまへの告知、売買時に起こり得る問題点の検証、メディアへのPR…やるべきことは山積みだった。それでも後藤さんは新しい風を感じていた。コロナ禍以前からSNSにあった可能性は、小石原の窯元にとっても変革をもたらすはずだ。「ネットで民陶祭」はそのきっかけになるかも知れない。

後藤さんらの動きは、小石原焼陶器協同組合と東峰村にも伝わり、ついには共催というかたちで地域全体に広まってゆく。不眠不休ともいえる実行委員会の働きを中心に、はたして「ネットで民陶祭」は開催にこぎつけた。そしてフタを開ければ、望外ともいえる数のお客さまが小石原の焼き物をお買い上げくださったのだった。ひとつの小さな、しかし燃えたぎる想いがさざ波の様に周囲を巻き込みやがて大きな流れとなる。そんな社会変革の姿がそこにはあった。

「やままる窯」の梶原さんは、この成果に確かな手ごたえを感じたという。
「先行きの見えなかった数年前。でも今は、これからもやっていけると思っています。小石原の美しい自然と深い歴史は確かな資産です。窯元はそれらを繋ぎながらも、時代の変化に対応せねばならない。このコロナ禍のなかにもチャンスはありました。豪雨被災の爪痕がいまだに残る東峰村ですが、私たちを支援して下さる方々やお客さまとネットを介してでも通い合っている実感があります。それはきっとこの地の未来へも繋がっているはずです」

 

ここまでの物語を聴いた僕はうなった。
今の若竹屋にも大いに繋がる話だった。
そして深く自省した。
僕も変わりたい。変わろう。

 

そんな思いからこのホームページの開設、そしてYouTubeチャンネルの開設を思い切ってやってみたのでした。使い慣れないSNS、ハッシュタグってなに?と友人に聞きまくり(笑)、「文章が長すぎる」とお叱り…いやアドバイスを受け、日々悪戦苦闘しています。でも、これらを始めてから色んな気づきが増えました。若竹屋のお酒をインスタ等に載せて下さる方がこんなに沢山いらっしゃるとはこれまで知りませんでしたし、その中のご意見は実に貴重ですし、励ましの言葉には勇気を頂いています。

いま「やままる窯」の息子さんは陶芸の勉強をしているそうです。僕の息子もこの春から若竹屋に戻ってきます。どちらも15代目修行中、こうしてまた次の世代へ技と想いが受け継がれてゆきます。「嬉しいことだよね」と僕と梶原さんは微笑みあいました。

 



■小石原焼・梶原日出窯「やままる窯」さん
FBページ➡https://bit.ly/3pPt6mg​
instagram➡https://www.instagram.com/narumi.k623/

◆若竹屋伝兵衛・馥郁元禄之酒 720ml¥1,320円(税込)
(わかたけやでんべえ・ふくいくげんろくのさけ)
https://bit.ly/3aQXW82
若竹屋の創業時(元禄12年/1699年)の製造法を再現した純米酒を5年熟成しています。この酒は、同じ時期にあった小石原の焼き物に注がれて飲まれていたことでしょう。300年以上を経ていま、私・14代若竹屋伝兵衛と14代窯元・梶原日出さんが出会ったことに不思議なご縁を感じています。


■若竹屋酒造場HP➡ https://wakatakeya.com/
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伝兵衛YouTubeチャンネル➡ https://bit.ly/2M8dZ8y
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